2003/07/26 (土) 02:53:33        [mirai]
8月 4日
金/そら
目覚めは、日ざしの中…
いつだって、まぶしくて…
そして、優しさの中にあった。
見上げると、彼女の顔。
…みすず。
その腕の中に僕はいた。
「そら…」
「わたしね…」
「大好きなひとの夢を見てた…」
「はげまされてた」
「がんばれ、がんばれって」
「………」
「ね、往人さん…」
「往人さんは、最後にわたしのそばにいてくれたんだよね…」
「わたしのことを思って、いてくれたんだよね」
「最後にはやっぱり、戻ってきてくれて…がんばれって、わたしに何かをくれたんだよね」
「それは大切なものだから…」
「すごく大切なものだから…」
「だからこんなことで諦めちゃダメだよね…」
「そんなことしたら、またしかられちゃうよね」
「頭、ぽかって叩かれちゃうよね…」
「往人さん、わたし、ひとりでも、がんばれるかな」
「ひとりぼっちでも、がんばれるかな」
「がんばらないとダメだよね…」
「だから、あきらめたら、ダメだよね…」
「ひとりでも、がんばらないとダメだよね…」
もう、彼女はさっきの彼女とは違った。
目に光が戻ったのがわかる。
だから、翼を大きく広げた。
僕はまだ飛べないけど…彼女には行ってほしかった。
ここから、一番遠いところまで。
「そうだよね…そらが飛べるようになるまでわたし一緒にいるって言ったもんね」
「わたし、がんばってみる」
「わたし、強い子」
「それぐらいしか、取り柄ないし」
「にはは」
小さく囲われた空を見る。
そして、その空に誓う。
大丈夫。
僕も、一緒にいくから。
…と。
「今日は、久々にでかけよーっ」
「おーっ」
彼女が僕を肩に乗せてくれる。
「外に出てね、楽しいことして遊ぶの」
「歩くのはつらいけどね、がんばってみる」
陽が目に痛い…。
どれだけ僕たちはこうして陽を浴びていなかったのだろう。
どこまでも道が伸びて、その地面に降りそそぐ日差し。
なにひとつ変わっていないはずなのに、今は優しく僕たちを迎え入れてくれていた。
僕たちはしばらく立ちつくしていた。
「うーんっ…気持ちいい」
「久しぶりの外の空気」
「おいしい」
「よいしょ…」
ゆっくりと歩いてゆく。
「よいしょ…」
僕たちは歩いてゆく。
「ちょっと休もうね」
「でも、楽しいことってなんだろ」
「何をしたら、一番楽しめるかな」
きょろきょろ。
「結局これかな」
「ヘンなジュース」
「んー…」
「代わり映えしないけどいいよね」
「今までもそうだったし、やっぱりわたしはこれをひとりで飲んで楽しむの」
「いいよね」
ふらふらと販売機にもたれるようにして、立ち上がり、硬貨を取り出す。
かちゃり。
「今日はひとりでがんばるって決めた記念日」
「だから、特別ヘンなの飲もっと」
「んー、どれにしよう」
「これはよく飲んでるし…」
「こっちは普通の味だったし…」
「わ…新発売、見っけ」
「これはラベルからしてコワイ…」
「すごい色してるし…」
「でも、飲むの」
「えい」