2003/08/10 (日) 05:30:10        [mirai]
8月10日 木
そら
その日は一日中穏やかだった。
女は、彼女のそばにいて、静かに話しかけ続けた。
彼女はそれに頷いては、札を並べるだけだった。
【女】「ほら、出来立ての卵焼きや」
【女】「昨日のはもったいないことしたからなー」
【女】「食べるか?」
【みすず】「ううん、いらない」
【女】「甘いんやで。激甘や。いらんのか?」
【みすず】「うん…」
ぱたぱた…
【女】「そうかー。しゃあないな。ひとりで食べるわ」
もぐもぐ。
【女】「あー、おいしい。めっちゃうまいわ。我ながら」
【女】「こう見えても、うち、料理うまかったんやなぁ」
【女】「年の功、いうやつやろか」
【女】「って、若いっちゅーねんっ」
ぽかっ!
自分の頭を叩いていた。
そうして女がひとりにぎやかに食べていると、いつしか彼女の顔がそちらを向いていた。
【みすず】「…おいしい?」
【女】「ああ、おいしいで。中はまだとろとろで半熟やねん」
【みすず】「すこし食べたいな…」
【女】「そうかー。ほな、一切れやるわ」
棒でつかんで、それを彼女の口にいれる。
【みすず】「あつ…」
【女】「ん、やけどせぇへんかったか?」
【みすず】「うん、おいしい…」
【女】「そーかぁ。そら良かったな」
【みすず】「もっとほしいな」
【女】「いらん言うたくせに。残りはうちのやー」
【みすず】「が、がお…」
【女】「あはは、うそや。ええで。残りは全部観鈴のや」
【女】「観鈴のために作ってきたんやからなー」
【女】「ほら、あーんし」
【みすず】「あーん」
ぱく。
【みすず】「あまくて、おいしい」
【女】「観鈴専用やもん。うちら、甘すぎてよう食べへんわ」
久しぶりに、仲のいいふたりを見た気がする。
その光景がずっと続けばいいのに。
僕はそう願った。
【女】「ん? また、占いか」
【女】「おばさん、手伝わんでええか?」
【みすず】「手伝って」
【女】「よし、任せとき」
【女】「ここに置き」
ぱた…
【女】「次ここや」
ぱた…
【女】「最後はここや」
ぱた…
【みすず】「終わった」
【女】「終わったな。えっと、明日は…」
【女】「え…」
【みすず】「うん?」
【女】「………」
【女】「あ、間違うてた。うち、間違うてたわっ」
【女】「置く順番間違うとったな。これ、こっちやったわ」
【みすず】「うん…」
【女】「お、いい日や。明日はごっついい日や」
【みすず】「やった」
にこっと、微笑む。
【女】「そうかー。堪忍な。なんで置く順番、間違えたんやろなー」
【女】「ボケが始まったんかいな」
【みすず】「………」
【女】「そんな歳食ってへんて…ははは」
【みすず】「そろそろねる…」
【女】「せやな、そうし。明日も早起きして、トランプしたらええ」
【女】「ずっと、そうしてたらええ。うちが手伝ったる」
【みすず】「うん」