中坊弁護士はまず、豊田商事が雇っていた顧問弁護士からお金を返還させた。 さらに、1人で国税庁に乗り込んで、豊田商事のセールスマンたちの給料から 生じる所得税の源泉徴収分の返還を請求した。国税庁は「われわれは賭博の金 であっても売春婦の所得であっても所得税というものは取る」と言って、これ に応じなかった。だが、中坊は諦めず何度も国税庁に足を運んだ。そして、つ いに、国税庁が折れた。破産管財人側が従業員を相手取って裁判を起こし、そ の従業員の報酬契約が公序良俗に反して無効であるということが確定すれば、 その分に相当する所得税は返すと国税庁は認めたのだ。つまり、公序良俗に反 する行為があった場合、そこに雇用契約があったとすればそれを無効にするこ とができ、それによって生じた給料は給与所得ではなく雑所得となる。雑所得 には源泉徴収義務がなく、この源泉徴収分の13億円を取り戻すことができた のである。このようにして返還を請求し、他のも全部合わせて120億円余り を取り戻すことに成功した。この管財業務は6年の歳月を費やした。