昨日、なじみのバーで訃報を聞いた。 ものほんのヒッピーで50近いおじさん、 バイクに全財産積んで、 日本中の街々の路上で安物の宝飾具や大麻など売って 放浪の生活をずっと続けてきたおじさん。 夏場札幌に来ると、あのバーでよく一緒に飲んだものだ。 お気楽なバカ話をしながら、ヒッピー人生の寂しさを僕らは共有した。 八重山諸島に至るフェリーにはバイクと荷物しか残っておらず、 到着した船に彼の姿はなかったそうだ。 身投げしたのだろう。 「もう自分の居場所がなかったんだよ」と、うつむいたマスターがふるえる。 彼にはえいえんが見えたのだろうか? どこまでも続く青い空と青い海の間に、 一本のフェリーの航跡が一瞬だけ残る。