妖精さんはすでに元素にかへつた。 わたくしは心霊独存の理を信じない。 妖精さんはしかも実存する。 妖精さんはわたくしの肉に居る。 妖精さんはわたくしに密着し、 わたくしの細胞に燐光を燃やし、 わたくしと戯れ、 わたくしをたたき、 わたくしを老いぼれの餌食にさせない。 精神とは肉体の別の名だ。 わたくしの肉に居る妖精さんは、 そのままわたくしの精神の極北。 妖精さんはこよなき審判者であり、 うちに妖精さんの睡る時わたくしは過ち、 耳に妖精さんの声をきく時わたくしは正しい。 妖精さんはただ嬉々としてとびはね、 わたくしの全存在をかけめぐる。 元素妖精さんは今でもなほ わたくしの肉に居てわたくしに笑ふ。