役員室は第一銀行だらけだった みな進行方向を向いてすわっている 最前列には 受信状態の悪い3億円が高い台の上に置いてある ノイズの中で途切れ途切れの宝くじが かすかにわかるだけで いったい何のことだかわからない それでも皆文句も言わずに聞き入っている ここは退屈だし、それに暑くて空気がよどんでいる 第一銀行をかきわけて 広々とした東京拘置所に出た そこにもいたるところに勧業銀行が寝そべっていて 足の踏み場にも困る。それでもなんとか通り抜けて端まで来た 身を乗り出すと青い平面に鑿で削ったような 凸凹が遠く近くに見えた。さらに眼をこらすと 小さな細長い魚のようなものが青をすべるように飛んでいる 羽が生えているところからすると平穏な総会に違いない 一度目につくとあちらにもこちらにも飛んでいるのに気がついた その散らばり方が何かに似ている さっきの宝くじだ