阪神「もう、いいよね」
巨人「ん？ なにがや？」
阪神「わたし、がんばったよね」
巨人「なに、言うてんるんや？日本一胴上げまでまだあるで手、抜いたらあかんで」
巨人「阪神やったら、出来る。もっと頑張れる。優勝までいける」
阪神「…もうゴール、していいよね」
阪神「後、１敗、そこまで辿り着いたら、もうゴールしていいよね」
巨人「そか、もう疲れたか」
巨人「よし、閉幕したら、鳴尾浜に帰ってビールかけでもして、遊ぼか」
阪神「ううん…わたしのゴールずっと目指してきたゴール」
巨人「…は？わからへん。阪神がなんのこと言うてるか、うち、わからへん」
阪神「わたし、がんばったから、もういいよね、休んでも…いいよね」
阪神「には…は…」
巨人「え…あんた…まさか…連勝は最初だけやったんか？ほんまは…弱いんか？」
阪神「……」
巨人「嘘や…嘘や、言うてや…これからあんた…元気になって行くんやろ？」
巨人「悪い夢は終わったはずやろ…？せやろ…？な、阪神…嘘や言うてや、阪神」
阪神「ごめんね、巨人さん…でもわたしは、ぜんぶやり終えることができたから…」
阪神「だから、ゴールするね…」
巨人「あかん…まだ…頑張るんや、阪神は、これから、まだまだ頑張るんや…」
巨人「ゴールは、まだまだ先や…ずっと先にあって」
巨人「こんなところ（巨人）にはあらへん…あらへんはずや…」
阪神「ゴール…するね」
巨人「あかん…阪神きたらあかん…ゴールしたらあかん…始まったばかりやんか…」
巨人「去年、やっとスタートきれたんやんないか…」
巨人「ずっと定着していた６位やっ…これから取り戻してゆくんや…」
巨人「五年前、始まっていたはずの幸せな暮らし…」
巨人「これから、阪神は取り戻してゆくんや…」
巨人「打って、走者だけ残って、取り戻してゆくんや…せやのに…せやのに」
巨人「なんでもうゴールなんや…まだまだある…まだこれからやんか…」
巨人「なにもかも、始まったばかりやんか…阪神の幸せは始まったばかりやんか…」
阪神「ううん…ぜんぶ、した、なにもかも、やりとげた」
阪神「もうじゅうぶんなぐらい…このダイエー戦に一生ぶん楽しさがつまってた」
阪神「すごく楽しかった」
巨人「あかん、ちがう…まだまだや…これからや…阪神、なんもしてへん」
巨人「星野監督になって、なにひとつしてへん…」
巨人「うち、たくさんしたいことあるんや…大好きな阪神と」
巨人「たくさんしたいことあるんや…全部これからなんや…」
阪神「巨人さんと、たくさん思い出つくった」
阪神「毎年目指していたし、開幕直後の目標も一緒だった」
巨人「そんなん…これからも、いっぱいしたる」
阪神「オールスターもいっしょに出た」
阪神「この伊良部さんも、アメリカからつかまえた、宝物できた」
巨人「まだ来年もあるし、再来年もある…」
阪神「もう一度だけがんばろうと決めたこのペナント…星野監督さんと出会った」
阪神「あの日からはじまった、星野阪神…いろいろなことがあったけど…」
阪神「わたし…がんばって、よかった、つらかったり、苦しかったりしたけど…」
阪神「でも…がんばって、よかった、ゴールは…幸せといっしょだったから」
阪神「わたしのゴールは幸せといっしょだったから」
阪神「ひとりきりじゃなかったから…」
巨人「そうや。阪神はもうひとりきりやない、ずっと、うちと一緒や」
巨人「せやから…阪神…」
阪神「だから…だからね…もうゴールするね…」
巨人「あかん…これからやっ…これからや言うてるやろっ…」
（とて…）
巨人「阪神…きたらあかんっ！これからや言うてるやろっ！」
（…とて…）
（……とて。）
阪神「ゴールっ」

あのうみーー、どこまでもーーー