1985年か。俺がクラスの佐々木さんに、いつも胸を高鳴らせていた頃だ。 彼女はクラスで一番の小柄なからだを、ほのかに膨らみはじめた乳房を、いつも 赤いセーターで覆いかくすようにしながら、物陰からの俺の熱い視線を受け止めて いた。 小首をかしげるようにして先生の話を真剣に聞く彼女のすこしうるんだまなざ し。シャーペンをくるくるとまわしては失敗してとりおとし、またムキになってま わしはじめる彼女の不器用な姿。俺は来る夜も来る夜もそんな彼女の幻影に惑わさ れ、そしていつしか俺はそんな彼女を思い浮かべながら固くなった己の性器をもて あそぶことを覚えた。 そんな手慰みにふけった翌日はまともに彼女の顔を見られないのが当時の自分に は不思議だったのだが、それが性の目覚めであることを知ったのはそれからずいぶ んしてからのことだった──。