2003/12/05 (金) 23:28:58 ◆ ▼ ◇ [mirai]「ーーーだよね、ーーーーーと思う」
「でもーーーーとかーーーーーーーーーでしょ」
襖の向こうから同級生の話し声が聞こえてくる。大切な友達。
お見舞いに来てくれたと思うと、素直に嬉しい。
「志摩子さんってとっつきにくいし、何考えてるか分からないから苦手なのよねー」
「うーん。確かにもうちょっとはっきりして欲しいとは思うけど…」
「まあ、あれでも仕事はちゃんとしてくれてるからいいんだけど」
「そろそろ、聞こえちゃうかもよ」
「りょーかい」
足音が襖の前で止まる。
「志摩子さん元気ー? お見舞いにきたよー」
「失礼します。ご機嫌どうですか?」
同級生がいつもの笑顔で部屋に入ってきた。
「…お見舞いに来てくれてありがとう」
私はいつもの笑顔でいれてるだろうか?
「志摩子さんがいないと薔薇の館も寂しいよ、乃梨子ちゃんも元気ないしさー」
「でも無理しなくていいよ、風邪が完全に治ってからで」
「ええ、ありがとう」
いつもと何ら変わりの無い光景。
由乃さんがいろいろな話をして、祐巳さんがときどき的外れなことを言って、
由乃さんが、ため息つきながらも分かりやすく説明する。
そんな二人を眺めて私も笑う。
でも、もうこれからは、心から笑うことは無いだろう。
二人の本音を知ってしまったから。
自分に自信がなくなってしまったから。
「それじゃあまたねー、志摩子さん。ごきげんよう」
「また来るね、ごきげんよう」
「…ごきげんよう」
二人が部屋から出て行ったのを確認して、耳をふさいだ。
雑音が聞こえないように。これ以上悲しくならないように。
私は泣いていた。