動物の世界では,寄生虫が宿主の行動をコントロールする例はたくさんあります。 たとえば,牛や羊に寄生する槍形吸虫は良い例となります。 槍形吸虫はその感染経路として,カタツムリの中で成長した幼虫がアリに食べら れる必要があります。そのためにアリが行動するところにベタベタした幼虫をばら 撒くのです。そうすると肢にくっついたベタベタした幼虫を,アリは嫌がって食べ てしまう。中間宿主であるアリの体の中で感染性の幼虫となった槍形吸虫は,アリ の頭に移動してその行動をコントロールしてしまうのです。 そして牛や羊が好んで食べる草の上のいちばん目立つところに登らせる。そこで 草と一緒に牛や羊に食べられることで,初めて槍形吸虫は成虫になります。非常に 恐ろしい寄生虫だといえるでしょう。 (藤田・談)