2004/01/09 (金) 22:48:17        [mirai]
1965年にNASAの有人宇宙船センター(現、ジョンソン宇宙センター)
で、真空チャンバーの中にいる宇宙飛行士の宇宙服から、空気漏れが起きる事
故があったという。
 このとき、宇宙飛行士は1psi =0.068気圧未満の環境にさらされ、14秒後に
意識を失った。15秒後チャンバーは加圧され、飛行士は一命を取り留めたん
だけど、この気絶する寸前に宇宙飛行士が感じたのは、舌の上で沸騰する唾液
の感触だったそうだ。 

  ところで、真空にさらされた人体に何が起きるかという問題で昔からよく話
題になったのは、真空中では血液が瞬時に沸騰するのではないかとか、身体が
フーセンのように膨張、破裂するんじゃないか、あるいは、超低温で瞬間的に
凍りつくんじゃないか、なんてことだった。でも、これらはどれも、基本的に
は起きないんだよね。

 たとえば、日の当たらない真空の宇宙は確かに非常に涼しい(マイナス百数
十度くらい)けれど、真空中は放射冷却しかしないので、冷えるには時間がか
かるだろう。

 また、血液も沸騰はしない。なぜなら、体温を37度Cとして、そのときの水
の蒸気圧は47mmHgだからだ。つまり、気圧がこれ以下なら水は沸騰するけど、
血液の場合は血圧(正常血圧の人で拡張期85mmHg、収縮期130mmHg)がかかって
いるから沸騰しようがないのだ。

 また、体がフーセンのように破裂することもない。なぜなら、皮膚はかなり
丈夫だし、それほど大きな力もかからないからだ。

 真空にさらされたとき、何が体を膨らませようとするのかというと、それは
呼吸していた空気じゃない。肺と消化管などに多少空気はあるけど、肺の空気
は吐き出さればなくなるし、消化管のガスはさほど多くないから、ほとんど無
視できる。すると残るのは、血液などの体液が沸騰して気体になったときの圧
力しかない。それは結局、体液の蒸気圧と真空との圧力差だから、47mmHgでし
かない。 だから、真空に投げ出されたとき、すぐに体が破裂する心配はない
わけだ。