スウイフトは発狂する少し前に、梢だけ枯れた木を見ながら、 『おれはあの木とよく似てゐる。頭から先に参るのだ』と呟いたことがあるさうである。 この逸話は思ひ出す度にいつも戦慄を伝へずには置かない。 わたしはスウイフトほど頭の好い一代の鬼才に生まれなかつたことをひそかに幸福に思つてゐる。