6歳年上の兄は私の中学入学と同時に自衛隊員になった。 私は兄を知る教師たちに、今何しているのかと聞かれたものだ。 大抵は授業中の問いかけだったのでクラスの皆は私の兄が自衛隊員であることを知っていた。 教師Sは若いバリバリの日教組、両親も教師というサヨクな男だった。 彼の授業で思い出深いのは、北朝鮮というのは間違っている、 朝鮮民主主義人民共和国といいなさいといわれ、クラス中で声をだして チョーセン ミンシュシュギ ジンミン・キョーワコクっと唱えたことだ。 教師Sは当然憲法九条も大好きで、自衛隊は人殺しをする職業だといった。 するとクラスの目は私に集まった。何かおかしいと感じつつも反論出来ない、 ガキゆえに言葉にならぬもどかしさがあった。 しかし、その感情はけして恥ずかしさではない。 言葉を持ち得ぬことへの悔しさと怒りだった。