> 2004/02/01 (日) 20:12:37 ◆ ▼ ◇ [mirai]> 天使のしっぽで猿の子が生理になる話を誰か転送してくれないか?(;´Д`)見たいです
腹の痛みは和らいでいる。
ただ、熱のせいなのか、それとも薬の副作用か、身体がゆらゆらと浮かんでいるような。通
常身体にかかる重力とは違った感じがした。
そうだ。水の中を歩いている感覚に似ている。
大きな水槽の中に紛れ込んだよう。
ほら。
生徒たちがゆっくりと、廊下を、階段を、そして校舎の外をも、まるで魚が泳ぐように進ん
でいく。
校舎に着いた当初は、多分体調が悪すぎて気がつく余裕などなかったのだろうけれど、校内
は、放課後とは思えないほど生徒の姿がたゆたっていた。宝探しには、予想以上の参加者があ
ったのかもしれない。
蓉子も、魚に混じって歩いていった。夢の中で歩くように、なかなか早くは進めない。けれ
ど、嫌な感じではない。
「ごきげんよう」
見知らぬ生徒が声をかけてきた。一年生か二年生か。とにかく同学年ではない。
「ごきげんよう」
蓉子も挨拶を返した。
「あの、紅薔薇さま? ご一緒してもよろしいですか」
「もちろん?」
目的地は同じなのかどうかわからなかったけれど、蓉子は同行することを承諾した。する
と、またどこかから別の生徒が現れ、しばらくつかず離れず泳ぐように同じ方角に歩いた後、
やはり挨拶してから側に寄ってきた。
「桃太郎みたいね」
蓉子は嬉しい悲鳴をあげた。いつの間にか人数が増えて、全部で八人の家来持ちになってい
た。
「でも、どうして? 私は吉備団子をもっていないわよ」
「そんなこと」
家来たちは一斉に笑った。
「私たち、別に吉備団子なんて欲しくないですよ」
「え?」
「私たちはただ、紅薔薇さまの側にいたいと思っただけなんですから。もしかしたら、犬や猿
やキジの吉備団子だって、お供をしたい口実だったのかもしれませんよ」
別の少女がうなずいた。
「私はいつも、少しでもお近づきになりたい、って思っていたんです。でも、完壁で隙がない
んですもの、紅薔薇さま」
「隙が、ない?」
「でもよかった。思い切ってお声をかけてみて」
「そうそう。なぜかしら今日はおっとりっていうか、ぼんやりというか。とても親しみやすい
雰囲気をなさっていて」
「ちょっと、失礼よ」
「あ、ごめんなさい」
友人にたしなめられて、つい口を滑らせた生徒が詫びを言った。
「いいのよ」
蓉子は目を細めてほほえんだ。
「……ああ、そう。私はいつもそんな風に映っていたの」
自分では気がつかなかった。無理に紅薔薇さまの威厳を保っていたわけではなくて、それが
ありのままの姿だった。優等生になりたかったわけではない。そんな風にしか、生きられなか
っただけだ。
「じゃあ、私たち両思いだったわけだわね」
薔薇の館にいる自分たちと、それ以外の一般生徒。もっと歩み寄りたかったのに、距離を縮
めたかったのに、なかなかうまくいかなくて。
「ねえ、お願い。これから一緒に薔薇の館に行ってくれない?」
「ええ、もちろん」
思えば、いつも忙しくしていた。何の目的もなく、こんなにゆっくりと廊下を歩いていたこ
となどなかった。立ち止まる暇などなかった。ましてや回り道する余裕など。
忙しくしていることで、自分が不必要な人物ではないことを確認しようとしていたのかもし
れない。
ゆっくりと見上げると、いつも来慣れた薔薇の館が不思議な色合いで目に映った。
入り口の側まで来ると、向こう側から扉が開かれた。
「あ、蓉子」
そこにいたのは、白薔薇さまこと佐藤聖だった。同じ薔薇さまと呼ばれる仲間の一人。
「来ないかと思って心配しちゃった。試験会場から、直接?」
いつも端正な聖の顔は、何か食べかすのような物がついていて間が抜けていた。
「一体何食べていたの」
聖の頬についていた物をつまんで見てみると、それは茶色と黄色のスポンジ屑だった。大方
バレンタインデーでもらったケーキを、家に帰るまで待ちきれなくてどこかでこそこそ食べて
いたのだろう。
「いや、別に。ははは」
図星を愛想笑いで誤魔化しながら、聖は目ざとく蓉子の背後のお供を見つけて中に招き入れ
た。
参考:2004/02/01(日)20時11分02秒