2004/02/06 (金) 11:58:48        [mirai]
 このゲームを、神のようにやりこんだ友人がいた。

 今では名前も思い出せない、そんな昔の友人だ。名前は確か高橋。
かっ君とあだ名で呼んでいたから下の名前は知らない。団地の同じ棟に住んでいた。
彼は6階、僕は7階。そういう、周辺のことばかり覚えてる。記憶のドーナツ化現象だ。
 かっ君のポートピアやりこみは、とんでもなかった。異常ともいえるやりこみだった。
当時、他に遊びが少なかったからかもしれないが、とにかく今考えても異常だ。

 彼は、テレビをつけずに、ポートピアをクリアした。
あの『ポートピア連続殺人事件』を、テレビ画面を見ないでクリアできたのだ。
理解できないやり込みだ。

「ホンマにできてるんかいな!」
 そう言うと、かっ君は少し待てといって、しばらくコントローラーを操作する。
「今、太陽を虫眼鏡で見てるとこやで」
 テレビをつける。そのとおりだった。ヤスが怒っている。
「今、もんすたあさぷらいずどゆう」
 テレビをつける。そのとおりだった。ダンジョンの中、メッセージが表示されている。

 彼の頭の中がどうなっていたのか、未だに理解できないが、
とにかく彼は、ファミコンのスイッチだけを入れて、ポートピアをクリアした。

 15年以上会っていない。顔も思い出せない。
ただ、その事実だけが鮮明に記憶に残っている。顔の無い彼はいまも私の中で生きている。