戦争から、きらめきと魔術的な美が、ついに奪い取られてしまった。 アレキサンダーや、シーザーやナポレオンが、兵士たちと危険を分かち合いながら、 馬で戦場を駆け巡り、帝国の運命を決する。そんなことは、もうなくなった。 これからの英雄は、安全で静かで、もの憂い事務室にいて、書記官たちに取り囲まれて座る。 一方何千という兵士たちが、電話一本で、機械の力によって殺され、息の根を止められる。 これから先に起こる戦争は、女性や、子どもや、一般市民全体を殺すことになるだろう。 やがてそれぞれの国には、大規模で、限界のない、一度発動されたら、 制御不可能となるような、破壊のためのシステムを、生み出すことになる。 人類は、初めて自分たちを絶滅させることができる道具を手に入れた。 これこそが、人類の栄光と、苦労の全てが、最後に到達した、運命である。 しかし人類の繁栄と苦労は思わぬ方向に進んだ。 今こうして仮想的な空間で平和に甘んじた人々が戦車や飛行機に乗り、 仮想的な空間で誰の血も流すことなく戦争が出来るのである。