2004/02/15 (日) 23:22:49        [mirai]
「バレンタインデー?」
 多大な期待はしていなかったけれど、志摩子さんは「何のこと?」って感じに首を小さく
傾げて微笑んだ。
「……えっとね」
 痒くもない頭をぽりぽりとかいて、祐巳は言葉を詰まらせた。
 予想通りというか何ていうか。志摩子さんの対応ったら、どう見ても例年の二月十四日、
誰かにチョコレートを進呈している女の子のそれとは違う。
「嫌だ、祐巳さん。私だってバレンタインデーくらい知っていてよ」
 お上品にコロコロと笑う。ああ、よかった、と祐巳はほっと一息ついた。バレンタインデ
ーの説明を一からしなきゃいけなかったら、どうしようかと思った。
「この行事は、そもそも昭和二十一年の二月十四日、進駐軍のバレンタイン少佐が子供たち
にチョコレートを配ったという故事に由来しているのよ」
「……わりと、もっともらしく聞こえるわね」