2004/02/21 (土) 05:04:31        [mirai]
思い出のファミコン [マインドシーカー]

私の母は、水商売の人だった。
大阪の高級クラブで働いていたらしく、頻繁に「芸能人と飲んでいる」と
言っては、寝てる私を電話で起こした。まだ子供の私は、大体の場合は
眠いからといってすぐに電話を切って寝た。しかし、その日は違った。
いつものように母から電話がかかってくる。私の自室の電話に、こんな
時間にかけてくるのは母だけだ。
「・・・はい、もしもし中野です」
「あ、マサキかー? いまエスパーキヨタ君と飲んでるで!」
一気に飛び起きた。『マインドシーカー』は、エスパーキヨタの指導で
超能力を開花させるゲーム。どこで彼と飲んでいるかを聞き、服を着替え、
ジャンパーのポケットに『マインドシーカー』のカートリッジをねじ込み、
自転車に飛び乗った。普段なら10分はかかる道を、4分くらいで走り、
梅田にある母の行きつけの店に走った。冬なのに、汗が流れている。
店に飛び込むと、母が飲んでいる。隣にはキヨタ君。タバコの煙が立ち
込め、オレンジ色の照明で薄暗く照らされた店内は、そのときの私には、
あまりにも大人の世界だった。
「あ、マサキ、ほらエスパーキヨタ君」
私はポケットから『マインドシーカー』を取り出し、水割りと灰皿が置か
れたテーブルの上に出した。「ココにサインしてください!」気持ちよく
飲んでいるときに、いきなり飛び込んできた子供にこんなことを言われても
さすがエスパー、キヨタ君は冷静にこう言った。
「うわ、キミこんなゲーム買ったん?」