きのふ近うある吉野家に行きたるに、なでふこともなう人のおほくあれば、 えもゐられず。 よう見るに、垂れ幕の下がりてあり、百五十円引きとなむ書きたる。 あなや、をこかな、しれ者かなと。 わぬしら、よき人は百五十円引きばかりにてひごろ来も来ぬ吉野家になどか来たらむ。 百五十円よや、よや。 親子連れあり。一族郎等ひきつれて吉野家に来たる、いとむくつけし。 あまつさへ、てて様は特盛頼まうわいの、など言ふ様こそ、かたはらいたけれ。 百五十円給ぶに往ねよかし。 さるは、吉野家てふ所、げに殺伐たらむこそつきづきしけれ。