2004/03/17 (水) 21:44:40        [mirai]
「1990年代の末頃から、恋愛物語要素やシナリオなどを重視し、性行為の描
写を含む選択肢による分岐を含むイラスト付きの読み物とでも言えるような
成人向けゲームが多くなってきた」ことと関連するが、特にヒットした名作
と呼ばれるようなエロゲーのシナリオ、テキストはまさに今、現在の、限定
された範囲であるかもしれないが日本社会の雰囲気、気分、意識を他よりも
非常に良く描写し、現代日本の、最先端の(最先端を走っている)文学であ
る可能性がある(SFやファンタジー物は直接的に現代日本社会をえがいては
いないが、非日本・非現代に作られた伝奇など空想の物語を見れば分かると
おり、空想も実のところその作られた時代・地域の社会を色濃く反映してい
る)。しかしながら現状では社会的にはそのような見方はほとんどされては
いない。そしてまたそれは「大きな意味での、広義の文学」にあたるにもか
かわらず、文壇からは無視・黙殺され、現状では文学賞の検討の対象には全
くされていない。現代の一般の若い日本男性にとって自分達により近いのは
いわゆる芸術的で難解で市場規模の小さい「純文学」なのであろうか、それ
とも遥かに市場規模が大きく、純文学より大きな影響力を持つ可能性も考え
られるエロゲーの「文学」なのであろうか?

もちろん現在の段階では、過度の商業主義にまきこまれ、芸術的観点からの
評価がなされなくなる可能性があるなど、文学賞の対象にするにはまだ早い
と言えるかもしれない。しかしながら、かつて吉本ばななの『キッチン』は
「まるで少女マンガのような小説」と評された。エロゲーの影響力を考える
と近い将来「まるでエロゲー文学のような」と評される作家が出現する可能
性はある。