>  2004/04/11 (日) 15:50:45        [mirai]
●次々と明らかにされる偽装・隠蔽工作
実際、イラクの核兵器研究開発は、湾岸戦争前の予想をはるかに上回る大規模なものであった。
湾岸戦争開始時点で、イラクの核兵器開発は第一号を完成させるまでに、およそ2年という
状態にまで迫っていた。これはイラク国内で濃縮ウランないしプルトニウムを生産するという
前提での話であり、もし核兵器に使用できる濃縮ウランや高純度プルトニウムが他から入手できる
なら、もっと短期間、つまり半年とか1年以内に完成できただろうと推測されている。
ソ連の崩壊により核兵器と関連物質、機材流出の危険が大きく高まった現状からみると、湾岸戦争が
91年前半に起こったのは、世界の安定からみると幸いであった。
しかし、イラクが現在の政権である限り、核兵器の開発保有をあきらめないであろうことは容易に
予想される。湾岸戦争前の時点でイラクの核兵器に従事していた科学者の数は約7000人、
技術者の数は2万人と推測され、現在もこの基本的な科学、産業基盤は維持されていると考えられる。
国連による査察でも、ツワイサの核研究施設では建物の中にもう一つの建物を造り、外部からは
その本当の目的が分からないようにしている事実が明らかにされた。タルミヤやアシュ・シャルカットの
施設では、故意に建物の外形をその本来の目的からは外れる設計にしたり、電力や水の供給路を
隠したり、意図的に保安、警備態勢を緩いものとしたり、外部への排水、熱などの排出をできる
だけ少なくするように配慮したり、工場の稼動状態をごまかすような工夫をしたりするなどの
偽装、隠蔽努力をしていた事実が明らかとなっている。

これらは米国やロシアの偵察衛星の監視をごまかすためと考えられる。イラン・イラク戦争のときに、
イラン・コントラ事件で米国がイランに兵器を与える相殺行為として、イラクにはイラン軍の配置などに
関する偵察衛星写真を提供したといわれる。ここからイラクは、どうすれば偵察衛星の監視をごまかせるのか
を学んだのではないかと推測されている。それが事実とするなら、米国にとって自業自得といえばそれまで
であるものの、大量破壊兵器拡散防止という、世界の基本方針からは極めて憂慮すべき事態である。
となると、現在行われているU-2偵察機や国連のヘリコプターなどによるイラクに対する空からの
活動監視方式も、下手をすると相当に見落としがあるのではないかという懸念が出てくる。
イラクは多くの研究、生産施設を地下に造り、分散してきた。ウラン濃縮方式もカルトロンという
極めて単純にして効率の悪い装置による方式のほかに、ガス遠心分離機を二万機並べる方法も実現
しようとしていた。その遠心分離機に使う部品の多くがまだ隠されているのではないかという疑惑が
ある。遠心分離機に使う高硬度のマレージング鋼20トンと、炭素繊維は国連の査察団に提出されたが、
これではまだ数千基の遠心分離機に使う量でしかない。一方では、かつて犬猿の仲であったシリアとの
間に秘密核兵器開発計画を進めているという情報も伝えられている。
イラクの大量破壊兵器開発が、いかに高度な秘匿努力の下で進められているか、その規模と内容に
世界が気付き始めたのは、ようやく最近になってからであり、一体どのくらいのものが隠されている
のかについては、想像を絶しているというのが現状である。(98.3.17)

参考:2004/04/11(日)15時50分21秒