2001/05/22 (火) 03:00:03 ◆ ▼ ◇ [mirai]父は私が裁くのです。
男の体だけが熱く汗ばんでいる。私の脚はいっぱいに開かれている。
いつからだろう、泣かなくなったのは。十五の頃までは涙も出ていた気がする。
私の体にむさぼりついているこの男は、私の゙父親”だという。父?これが?この
人の血が私の中に?親とは何だ。この人の奥さんは気付いているのだろうか。母は
優しい人だ。でも、弱い人。いや、もしかしたら誰よりも強い人なのかもしれな
い。誰も私を助けてくれない。
思っていると、男は満足したらしく、服を着て部屋を出て行った。私はしばらく
ベットで横になったままだったが、窓の外の強い風の音にはっとして起き上がっ
た。ふと手に触れたシーツが濡れている。私は憎悪を感じてベッドを降り、すごい
勢いでシーツをはいだ。私は息をついて、全裸のまま机の引き出しから煙草を取り
出した。火を点けて、吐き出す青い煙が、私の周りを漂う。お前もどこへ行けばい
いのかわからないのか。
私が獣なら、あの男をその牙で裂くであろう。
私が小さな虫でも、小さな抵抗をするであろう。
しかし私は、あまりに無力な、あの男と同じ人間なのだ。