2000/11/20 (月) 01:44:27 ◆ ▼ ◇ [mirai]目の前には床が緩やかな傾斜を描いていた。
一瞬何故こんな造りをしているのか考えたが「まあ、忍者屋敷だし」の一言で納得することにした。
そうして緩やかに傾いた床を登っていく内に気付いたのだが、どうやらこの床は見た限りでは気が付かないが、
右に傾き左に傾きしているらしく、歩いているうちに軽い眩暈を誘った。
その坂を登り切った所にはやはり扉があり、その扉の上には何故か看板が掲げられていた。その看板には
『京極堂』
と書いてあった。
(・・・おいおい、いくらなんでもこれはちょっとまずくないか?)
咄嗟にそう思ったが、足は何故か引き寄せられるかのようにその部屋に向かっていた。
心の中で、調子に乗って暴走気味の作者に罵詈雑言を浴びせながらも、
真一郎の手は自分の意志を無視したように扉に向かって伸びていった。
ガチャ―――。
扉を開けると目の前には本の山があった。
まるで今すぐこの部屋を古本屋として商売を始められる程の量の本が山と積まれている。
その先には和服姿の男が、まるで今しがた親でも亡くなったような不機嫌な顔で和綴じの本を読んでいた。
「あ、あの―――」
「相川真一郎くんだね」
男が本から目を離さずに話し掛けてきた。
「君の部屋に戻りたいのならこの部屋の向かいの壁の隠し扉を使うといい。
火影の部屋の事はなるべく黙っていてくれたまえ、あれはあれで結構気にするタチだからね。
あ、あと尚護が迷惑を掛けたらしいね。子供のしたこととはいえ、本当に済まなかった」
それだけを一呼吸で言い、急に真一郎には興味を無くしたように黙り込んだ。
「あの、あなたは誰ですか?あと、なんで俺の言おうとしている事がわかったんですか?」
男はやはり視線を本に落したまま、
「私はいづみの長兄で空也という者だ。君のことはいづみや火影から聞いていたし、
この部屋に来るには火影の部屋から以外には隠し扉しかないから、
忍者でもない君が来るには弟の部屋からだろうと推測しただけだ。尚護の件は・・・まあ、上であれだけ騒いでいれば、ね」
そこで初めて男―――空也は本から目を上げて言った。
「この世に不思議なことなどなにもないのだよ、関口君」
(・・・やっぱり)
なんとなく予想していたセリフだったが、それでも頭が痛い。第一、このネタってわかる人いるのだろうかと真一郎は思った。