陸軍省が公募した歌詩に、キングの作曲家が競作した結果、多紀英二作曲が 選ばれまし た。多紀英二とは誰だろうと当時首をかしげたものでしたが、 歌手の林伊佐緒と知って合 点がいきました。 彼は、作曲にも優れた才能を持ち、映画「ジャングルの女王」を観ていて、 ドロシー・ラムーアの歌う「月光と影」という主題歌を、暗闇の客席で採譜 するという特技をもって いることを、人づてに聞いた事があります。 レコードはキングのみで競作されず、永田紘次郎、長門美保が吹き込み、 昭和14年10 月に市販され、11月13日から「国民歌謡」になっています。 昭和18年、わずか6歳の加藤和枝ちゃんは、父親が出征する前夜、歓送 会の席でこの 歌と「九段の母」を廻らぬ舌で歌って席につらなる人々を泣 かせました。以来、この噂が 広まると、横浜の各町内会から出征兵士のあ るたびに、和枝ちゃんに口がかかり、この童 女が美空ひばりに成長したのです。