だが、北海道西部を横切って噴火湾に出てもファントムは現れない。燃料切れを知ら せる警告が鳴った。「着陸地点が見つからなければ、墜落だ」 機体を旋回させ、高度を下げて雲の下に出た。整然と並んだ函館の街並みが見えた。 「函館だ!」ロシアの荒々しい自然とあまりにも対照的な美しさ。 滑走路を懸命に探す。「あった!」が、短い。 しかも民間機が離陸しようとしていた。迂回すると燃料が持たない。 墜落の恐怖が過ぎる。民間機をやり過ごし、滑走路に突っ込んだ。 「ミグよ、壊れないでくれ!これはアメリカ亡命への手土産なんだ!」 ブレーキが悲鳴をあげ、煙が上がる。すさまじい振動。 250メートルもオーバーランし、ようやく機体が止まった。 離陸してから1時間が過ぎていた。