2025/10/01 (水) 20:49:38        [misao]
かつて、誓いを重んじる地に生まれた者がいた。
誰よりも律を守り、誰よりも他者を赦した。
しかし、誓いは守られるほどに重く、
赦しは繰り返されるほどに、骨を蝕む。
無数の裏切りを経て、彼の名は「みさお」となった。
それは忠義の誉れではなく、
裏切られるために在る者の、呪われた称号。
彼は王座を求めなかった。
だが最後に残った者が王と呼ばれるなら、
その座は、血と嘘と誓いの骸の上に築かれる。
今や王は立ち上がらない。
ただ、己に課した無数の誓いを、
呻くように、喉を焼きながら唱え続けている。
その声を聞いた者は、皆、誓いを立てたくなる。
誰にも届かぬ、誰にも守られぬ誓いを。
──みさおの王。
誓いの墓標にして、忠義の廃都を彷徨う影。
彼が微笑むとき、それは心が屈したときである。