かつて、誓いを重んじる地に生まれた者がいた。 誰よりも律を守り、誰よりも他者を赦した。 しかし、誓いは守られるほどに重く、 赦しは繰り返されるほどに、骨を蝕む。 無数の裏切りを経て、彼の名は「みさお」となった。 それは忠義の誉れではなく、 裏切られるために在る者の、呪われた称号。 彼は王座を求めなかった。 だが最後に残った者が王と呼ばれるなら、 その座は、血と嘘と誓いの骸の上に築かれる。 今や王は立ち上がらない。 ただ、己に課した無数の誓いを、 呻くように、喉を焼きながら唱え続けている。 その声を聞いた者は、皆、誓いを立てたくなる。 誰にも届かぬ、誰にも守られぬ誓いを。 ──みさおの王。 誓いの墓標にして、忠義の廃都を彷徨う影。 彼が微笑むとき、それは心が屈したときである。