2008/07/24 (木) 16:54:50 ◆ ▼ ◇ [qwerty]漫画「ドラゴンボール」の終盤、魔神ブウを倒すのに、悟空は「元気玉」を使った。
物語の設定上、あの技が最強ではあったんだろうけれど、地球にいる全ての人が悟空に
協力しないと成立しない、「元気玉」は、政治的にも合理的な選択だった。
物語のラストを少しだけ変えて、最後の戦いに「元気玉」を持ち出さないで、悟空個人
の力で戦いに決着をつけてしまったら、地球で待っている「普通の人」達は、きっと主
人公達に文句を言ったのだと思う。
「戦いのあおりを受けて財産を失った」とか、「死ぬかもしれないという恐怖を一方的
に強要された」とか。それは命懸けて戦ってたドラゴンボール世界の主人公にとっては、
たぶん理不尽なクレームが殺到する。
彼らはいいサービスを目指してたんだと思う。
地球に対する脅威を排除するために、みんな頑張って修行した。主人公達は強力で確実
な「サービス」を提供できるようになったけれど、あまりにも強くなりすぎた。あの世
界ではもはや、「一般市民」には戦いに貢献できる要素がなくて、彼らは地球が吹き飛
んでもおかしくないような戦いを傍観しながら、それでも待つことしかできない。
それがどんなに命がけの状況であったとしても、傍観者は退屈して、自分にもできる関
わりかたを探し始める。「元気玉」というのは、そんな傍観者に「関わる手段」を提供
して、主人公への支持を維持するための、優れた構造を備えた技だった。