> > それは妹の方では > 姉は毛深いから嫌い 「今後、私は祐巳に『祥子さま』と呼ばれても、返事をしないことにしましたから」 「えっ」 「だって。いつまで待っても、あなた呼び方変えようとしないんだもの」 言いたいことは言ったという風に、祥子さまは祐巳に背中を向けて どんどん歩いていってしまった。 「祥子さまぁ」 追いかけても、宣言通り振り返りはしない。 「無視されたくなかったら、ちゃんとお呼びなさい」 わかっているでしょ、って目を見ないですまして歩いていく。祐巳は、 ぽりぽりとこめかみをかいた。何だか、無性に照れくさい。 「……えさま」 「聞こえなーい」 こうなったら、絶対言わせるつもりらしい。 祐巳は、観念して辺りを見回した。幸い、マリア様しか見ていなかった。 「お姉さま!」 銀杏並木の中で、祐巳の声は妙にはっきり通った。するとマリア様のように きれいな毛並みのお姉さまは、よく響く声で「はい」と振り返って、満足げに 自慢の胸毛をなびかせたのだった。 参考:2008/09/27(土)02時00分12秒