>  2005/07/09 (土) 02:21:01        [qwerty]
> 「何したんや!?」 
> 「何も」 
>  ちよちゃんは答えた。 
> 「技さ」 
> 「技やて!?」 
> 「技術だよ」 
> 「な、な──」 
>  大阪は、言葉にできない声をあげた。 
> 「何がおこったか大阪さんにはわからんだろうが、これは神秘な力でもなんでもないよ」 
> 「──」 
> 「これは技術さ」 
> 「技術やて?」 
>  大阪は、歯を噛みながら、割れた割り箸を見つめていた。 
>  息をするのさえ、忘れてしまいそうであった。 
>  割れるのか。 
>  そう思う。 
>  ただの割り箸が、ここまできれいに割れるのか。 
>  できるのか。 
>  やれるのか。 
>  やれるのだと、ちよちゃんの笑みが言う。 
>  できるのだと、手にした割り箸が叫んでいる。 
>  さっきの自分の割り方などとは、根本的に違う。 
>  研ぎ澄まされた日本刀で、何もかも根こそぎ断ち切るような割り方。 
>  大阪は、それを見ていた。 
>  膝が、がくがくと震えていた。 
>  何か、凄まじいものが、背を駆け抜けている。背を駆け登ってゆく。 
>  駆け登って、脳天に突き抜ける。 
>  駆け登っても、駆け登っても、突き抜けても突き抜けても、まだ終わらない。まだ足らない。 
>  自分の背の底に、何か巨大な力の塊が、無尽蔵にあって、それが次から次に背を駆け登ってゆくようだった。 
>  震えるな。 
>  震えるな。 
>  身体の震えを、止めようとしても止めようとしても、止まらない。 
> なんという。 
>  なんという。 
>  まったく、なんというものを見たのか。 
>  なんという割り方なのか。 
>  今、眼の前に見たばかりのとてつもない光景。 
>  それは、自分は、本当に見たのか。 
>  大阪は、震える足を、前に踏み出した。 
>  ちよちゃんに向かって。 
> 「どうしたい、え?」 
>  ちよちゃんが言った時、ようやく、大阪が口を開いた。 
> 「あたしに・・・・・・」 
>  大坂は、やっと言った。 
> 「あたしに、割り箸の割り方を教えてくれへんか──」 

すると、ちよは両手を掲げてこう言いました。
「あなたが割りたいのはこの金の箸ですか?
 それともこの銀の箸ですか?」
正直者の大阪はすぐに答えました。
「いいえ、私が割りたいのは普通の割り箸です」

ちよはゆっくりとうなずくと大阪に金と銀の箸を
差し出しながらこう言いました。
「あなたは大変正直な人です。
 ごほうびにこの金の箸と銀の箸を差し上げます。」

大阪は思わずその箸を受け取りました。
それを見届けたちよは、ほほえみながら去っていきました。

大阪はしばらく考えたあとぽつりとつぶやきました
「これ、割れへん・・・」

参考:2005/07/09(土)02時15分12秒