> 2005/07/09 (土) 02:21:01 ◆ ▼ ◇ [qwerty]> 「何したんや!?」
> 「何も」
> ちよちゃんは答えた。
> 「技さ」
> 「技やて!?」
> 「技術だよ」
> 「な、な──」
> 大阪は、言葉にできない声をあげた。
> 「何がおこったか大阪さんにはわからんだろうが、これは神秘な力でもなんでもないよ」
> 「──」
> 「これは技術さ」
> 「技術やて?」
> 大阪は、歯を噛みながら、割れた割り箸を見つめていた。
> 息をするのさえ、忘れてしまいそうであった。
> 割れるのか。
> そう思う。
> ただの割り箸が、ここまできれいに割れるのか。
> できるのか。
> やれるのか。
> やれるのだと、ちよちゃんの笑みが言う。
> できるのだと、手にした割り箸が叫んでいる。
> さっきの自分の割り方などとは、根本的に違う。
> 研ぎ澄まされた日本刀で、何もかも根こそぎ断ち切るような割り方。
> 大阪は、それを見ていた。
> 膝が、がくがくと震えていた。
> 何か、凄まじいものが、背を駆け抜けている。背を駆け登ってゆく。
> 駆け登って、脳天に突き抜ける。
> 駆け登っても、駆け登っても、突き抜けても突き抜けても、まだ終わらない。まだ足らない。
> 自分の背の底に、何か巨大な力の塊が、無尽蔵にあって、それが次から次に背を駆け登ってゆくようだった。
> 震えるな。
> 震えるな。
> 身体の震えを、止めようとしても止めようとしても、止まらない。
> なんという。
> なんという。
> まったく、なんというものを見たのか。
> なんという割り方なのか。
> 今、眼の前に見たばかりのとてつもない光景。
> それは、自分は、本当に見たのか。
> 大阪は、震える足を、前に踏み出した。
> ちよちゃんに向かって。
> 「どうしたい、え?」
> ちよちゃんが言った時、ようやく、大阪が口を開いた。
> 「あたしに・・・・・・」
> 大坂は、やっと言った。
> 「あたしに、割り箸の割り方を教えてくれへんか──」
すると、ちよは両手を掲げてこう言いました。
「あなたが割りたいのはこの金の箸ですか?
それともこの銀の箸ですか?」
正直者の大阪はすぐに答えました。
「いいえ、私が割りたいのは普通の割り箸です」
ちよはゆっくりとうなずくと大阪に金と銀の箸を
差し出しながらこう言いました。
「あなたは大変正直な人です。
ごほうびにこの金の箸と銀の箸を差し上げます。」
大阪は思わずその箸を受け取りました。
それを見届けたちよは、ほほえみながら去っていきました。
大阪はしばらく考えたあとぽつりとつぶやきました
「これ、割れへん・・・」
参考:2005/07/09(土)02時15分12秒