宮台氏にとって重要だったのは、ポケベルやケータイといった、「繋がりの社会性」(北田暁大) を強化するメディアではなく、テレクラのような「匿名的な繋がり」を可能にする場所=メディア だった。前者は、そのメディアの性質上、基本的には「すでに見知っている間柄同士」でのコミュ ニケーション(繋がり)を強化するものであり、後者のように、「偶発的」な(この言葉もまた、 宮台氏が好んで用いていたタームですが)コミュニケーションを支援するものではない。 つまり宮台氏は、繋がりの《恒常性》と《偶発性》という2つがあったとき、前者ではなく後者に コミットする(してきた)。そして宮台氏が『恋空』をリアルなものとして読むことができなかっ たのは、そこでは《恒常的つながり》が圧倒的であり、《偶発的つながり》の存在は極めて希薄だ ったからではないか。――このように整理することができます。