>  2009/01/30 (金) 18:23:31  ◆  ▼  ◇  [qwerty]> 27歳無職の2月はつめたい
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27歳無職の2月はつめたい。正社員を募集している会社の玄関前に門番が立ってい
た。そこへ無職の男がやって来て、「採用してくれ」と言った。「今はだめだ」っ
と門番は言った。男は思案した。「今はだめだとしても、後でならいいのか」と、
たずねた。
「たぶんな。とにかく今はだめだ」と、門番は答えた。
採用の門はいつもどおり開いたままだった。門番が脇へよったので、男は中をのぞ
きこんだ。これをみて門番は笑った。
「そんなに入りたいのなら、おれにかまわず入るがいい。しかし言っとくが、おれ
はこの通り力持ちだ。それでもほんの下っぱで、中に入ると部屋ごとに一人ずつ、
順ぐりに人事担当がいる。このおれにしても三番目の人事部長をみただけで、すく
みあがってしまうほどだ」
こんなに厄介だとは思わなかった。採用の門は誰にも開かれているはずだと男は思
った。しかし、門番を見ているとおとなしく待っている方がよさそうだった。
男は入れてくれるのを待ち、許しを得るためにあれこれ手をつくした。そのまま年
月が経ち、視力が弱ってきた。あたりが暗くなったのかそれとも目のせいなのかわ
からない。
命が尽き欠けてきた。死のまぎわに、これまでのあらゆることが凝結して一つの問
いとなった。これまでついぞ口にしたことのない問いだった。
からだの硬直がはじまっていた。もう起きあがれない。すっかり縮んでしまった男
の上に大男の門番がかがみこんだ。
「欲の深いやつだ」と、門番は言った。
「まだ何が知りたいのだ」
「誰もが正社員採用を求めているというのに……」と、男は言った。
「この永いあいだどうして私以外誰一人中に入れてくれといってこなかったので
す?」
命の火が消えかけていた。薄れていく意識を呼び戻すかのように門番が怒鳴った。
「ほかの誰一人ここには入れない。この会社は、おまえ一人のためのものだった。
さあ、もうおれは行く。ここを閉めるぞ」
参考:2009/01/30(金)18時14分32秒