2009/02/22 (日) 18:34:35        [qwerty]
その明くる日も、ごんはくりを持って、
兵十のうちへ出かけました。兵十は、物置でなわをなっていました。
それで、ごんは、うちのうら口から、こっそり中へ入りました。

 そのとき兵十は、ふと顔を上げました。
と、きつねがうちの中へ入ったではありませんか。
こないだ、うなぎをぬすみやがったあのごんぎつねめが、
またいたずらをしに来たな。

「ようし。」
 兵十は立ち上がって、なやにかけてある火なわじゅうを取って、
火薬をつめました。そして、足音をしのばせて近よって、
今、戸口を出ようとするごんを、ドンとうちました。

 ごんは、ばたりとたおれました。


 兵十はかけよってきました。うちの中を見ると、
土間にくりが固めて置いてあるのが、目につきました。

「おや。」
と、兵十はびっくりして、ごんに目を落としました。

「ごん、おまい(おまえ)だったのか、いつも、くりをくれたのは。」

ごんは、ぐったりと目をつぶったまま、うなずきました。

 兵十は、ひなわじゅうをばたりと取り落としました。
青いけむりが、まだつつ口から細く出ていました。