有名な松平信綱(伊豆守)の実父は、大河内金兵衛と言った。 金兵衛はかねてから、「古田織部と言う人は、普通の死に方はしないだろう」 と語っていたが、はたして大阪の陣の折、織部は切腹を命ぜられた。 金兵衛の周りの人々はこれを不思議に思い、どうして織部の死を予言できたのかと 尋ねると、 「織部と言う人は、世の宝を損なう人だった。例えば掛け物が長すぎると言って切り捨てたり、 傷一つない茶碗や茶入れをわざわざ割って、それを修繕したあとを、景色が面白い などと言って楽しんでいた。 世の宝物と言うべきものを、傷物にして面白がるような人は、まともな死に方はしないだろう。 そう思っていただけだよ。」 と、答えたと言う。