2009/05/18 (月) 21:25:23 ◆ ▼ ◇ [qwerty]「つまりこういうことですかな、伯爵夫人。ご主人は中から鍵のかかった部屋
で男根を何者かに食いちぎられて亡くなっていた。食いちぎられた男根はご主
人の口の中へ強引に押し込まれていた。現場から何者かが逃走した形跡はない
…残されていたのはご主人が最後の力を振り絞って書いたと思われる血のダイ
イングメッセージ……一見太陽のようにも見えるが…これは明らかにオマンコ
マークですな」
探偵はそう言ってなぜか満足そうにうなずいたあと、パイプを加え美味そう
に煙を吐いた。断固たる嫌煙家としても知られるクンニリングス伯爵夫人はそ
の様子を認めると眉間に深い皺を寄せ、探偵に向かって抗議の視線を送った。
「あなた、勝手に他人の家に入り込んできたと思ったら、急に三文の推理小説
みたいなことをおっしゃって……一体どういうつもりなのかしら?私は警察以
外の方を呼んだ覚えはありませんことよ」
「三文の推理小説!」 と、探偵はパイプの火を消して懐にしまいながらニヤリ
と笑った。
「適切な例えですな。我々が今置かれているこの状況ほど、低俗なミステリも
中々ありますまい。口に出すのもおぞましいが……これがかの高名な『密室殺
人』だという事実にどうやら間違いはないようですからな」
探偵の少し芝居がかった口調に、夫人の眉間の皺はさらにその線を濃くした。
「失礼ですが、少しお口をお慎みになった方がよろしいようだわ。あたくしの
夫がこのような無残な方法で殺されたのを低俗だとおっしゃる気かしら?」
「失礼」
と、威厳ある声で二人のやりとりに割って入ったのはロンドン市警のチコー警
部であった。
「伯爵夫人、彼は傍若無人なのが玉に瑕ですが、ブリテンが始まって以来の優
秀な探偵ですよ。かのベイカーストリートの紳士もかくや、というね……。あ
なたも新聞で目にしたことがあるでしょう。彼、すなわちドデカー・オチン・
ポーの名前を」
「ドデカー・オチン・ポーですって!」
夫人の絶叫にも似た驚愕の声がクンニリングス家の居間に響いた。