2005/07/31 (日) 13:38:56        [qwerty]
「あばばばばばば、ばあ!」
 女は店の前を歩き歩き、面白さうに赤子をあやしてゐる。それが赤子を揺り
上げる拍子に偶然保吉と目を合はした。保吉は咄嗟に女の目の逡巡する容子を
想像した。それから夜目にも女の顔の赤くなる容子を想像した。しかし女は澄
ましてゐる。目も静かに頬笑んでゐれば、顔も嬌羞などは浮べてゐない。のみ
ならず意外な一瞬間の後、揺り上げた赤子へ目を落すと、人前も羞ぢずに繰り
返した。
「あばばばばばば、ばあ!」