2009/09/16 (水) 03:32:09        [qwerty]
万助は激怒した。
必ず、かの邪智暴虐のAIを除かなければならぬと決意した。

万助には女どもがわからぬ。万助は、新潟の漁師である。
イカを釣り、船と遊んで暮して来た。
けれども邪悪に対しては、人一倍に敏感であった。

きょう未明メロスは新潟を出発し、北陸自動車道から上信越自動車道へ抜け、
200kmはなれた此の実家にやって来た。

(略)

しばらく歩いて健二に逢い、こんどはもっと、語勢を強くして質問した。
健二は答えなかった。万助は両手で健二のからだをゆすぶって質問を重ねた。
健二は、あたりをはばかる低声で、わずか答えた。

「ラブマシーンは、人を殺します。」
「なぜ殺すのだ。」
「悪心を抱いている、というのですが、誰もそんな、悪心を持っては居りませぬ。」
「たくさんの人を殺したのか。」
「いえ、栄お婆さんだけを。」
 聞いて、万助は激怒した。「呆れたAIだ。生かして置けぬ。」