万助は激怒した。 必ず、かの邪智暴虐のAIを除かなければならぬと決意した。 万助には女どもがわからぬ。万助は、新潟の漁師である。 イカを釣り、船と遊んで暮して来た。 けれども邪悪に対しては、人一倍に敏感であった。 きょう未明メロスは新潟を出発し、北陸自動車道から上信越自動車道へ抜け、 200kmはなれた此の実家にやって来た。 (略) しばらく歩いて健二に逢い、こんどはもっと、語勢を強くして質問した。 健二は答えなかった。万助は両手で健二のからだをゆすぶって質問を重ねた。 健二は、あたりをはばかる低声で、わずか答えた。 「ラブマシーンは、人を殺します。」 「なぜ殺すのだ。」 「悪心を抱いている、というのですが、誰もそんな、悪心を持っては居りませぬ。」 「たくさんの人を殺したのか。」 「いえ、栄お婆さんだけを。」 聞いて、万助は激怒した。「呆れたAIだ。生かして置けぬ。」