「はい。トール君。」 「え?何?」 「荷物。もってくれない?女の子はエスコートしてくれなきゃ。」 適当なことを言ってゾーネンタトールイの魔の手をトールスに押し付けて、沙里は深海に手を伸ばす。 「はい。深海ちゃんも。」 「ゾーネンタトールイ?」 「いやいや、そうじゃなくて。荷物。トール君に押し付けちゃえ。」 「いいのかな?」 「いいよね?トール君。」 「――どうせ拒否権は無いんだろ?」 きゃー、そうこなくちゃ。トール君かっこいー。 思いっきり棒読みな賛辞を聞き流しつつ、トールスが深海に手を伸ばせば、深海は「ありがとー」と、のん気に笑った。 ちょっと可愛いじゃねーか女子高生、と、一瞬トールスもにへらっと笑みを浮かべたが、深海に渡された鞄は到底のん気に笑って返せるような代物ではなかった。 ぐしゃり、と。 トールスは想定外の重さの鞄を、うっかり地面に腕ごともって行かれたのだ。