ある男が、野ざらしになっていた骸骨を見つけ、気の毒に思って供養をして やった。その晩、男の家の戸を叩く者があり、「誰だ」と聞くと「妃(フェ イ)です」と答える。さらに訊ねたところ、「私は楊貴妃です。馬嵬で殺さ れてから葬られることもなく野ざらしになっていたのを、あなたが供養して 下さいました。お礼に夜伽をさせて下さい」と答え、その晩、男と夜を共に した。これを聞いて羨んだ隣の男が、野原を探し回ってやはり野ざらしにな った骸骨を見つけ、供養したところその晩やはり戸を叩く者があった。「誰 だ」と聞くと「飛(フェイ)だ」と答える。「楊貴妃かい」と訊くと「俺は 張飛だ」という答え。仰天して「張将軍には何ゆえのお来しで」と訪ねる と、張飛曰く「拙者、漢中で殺されてから葬られることもなく野ざらしにな っておったのを、貴殿に供養していただいた。お礼に夜伽をさせていただき たい」と言い、男は仰天した。