人類が米ソ核戦争による滅亡に最も近づいたといわれる1962年のキューバ危 機の折だ。ソ連がキューバに核ミサイルを運び込んでいる証拠だという航空写 真を携え、米国務省高官がひそかにパリに飛んだ。ドゴール仏大統領の支持を 取りつけるためである。 ▼フランスはなにかにつけ米国に盾ついてきた。高官は幾ばくか緊張していた に違いない。ところが、ドゴールはこう応じたという。「いや、写真は要りま せん。アメリカ合衆国大統領がおっしゃるなら私は信じます」。「『共和国』 フランスと私」(樋口陽一著)の中にあるエピソードだ。