2010/03/20 (土) 00:12:00        [qwerty]
発売日は水戸に久しぶりの大雪が降った日だった。 

2月18日。明利酒類(水戸市元吉田町)に隣接する同社の酒直売所「別春館」に、 
萌(も)え系美少女をあしらった梅酒「うめ物語」が初めて並んだ。真っ赤に染まった酒に、 
ほんのり赤ら顔の少女の絵。「本当に売れるの?」。 
企画を担当した同社相談役の小川真幸さん(71)は半信半疑だった。 

◆忘れられない笑顔 
「美少女キャラを使った梅酒を作ってみないか」。話があったのは昨年10月。 
水戸で開かれる同人誌即売会(コミケ)にちなんだ関連商品の相談だった。 
だが小川さんはコミケもしらなければ、萌え系美少女の意味も分からない。 
おたくと言えば暗くて自分の世界に引きこもる若者という印象を持っていた。 

半面、水戸の中心商店街を生き生きと再生させようとする実行委員会の心意気に惹(ひ)かれる部分があった。 
萌え系キャラを使った経済効果にも注目した。 

11月から準備を始めた。絵は人気漫画家の蒼樹うめさんに頼んだ。4種類の原画から一つを選び、 
絵に合う梅酒を造った。「3月末までに千本売れればいい」。予想はすぐ裏切られた。 

2月20日の土曜日。観光バスの客たちが、いつものように土産の酒を買いに入ってきた。 
と、客の中にどうも観光客とは印象の違う男性がいる。 
彼は自家用車で酒を買いに来ていた。「これが、おたくと言われる人かな」。接客していた小川さんはじっと観察した。