軌道角運動量は、スピン角運動量などとともに最も基本的な物理量の1つです。 これまでに、光あるいは、原子や結晶中の束縛された電子が、軌道角運動量を持つことはよく知られています。 しかし、原子や結晶から飛び出した、真空中(自由空間)を動く電子が、軌道角運動量を持つとは考えられていませんでした。 研究グループは、鉛筆の芯(黒鉛)を砕いて、その厚みがらせん状をしている構造を作製し、そこに電子を通過させ、 電子の波面の形をらせん状にねじることで、軌道角運動量を持つ電子を作り出すことに成功しました。 これは、世界で初めて電子の波面構造を制御し、電子の位相特異点を生成したことを意味しています。 電子が発見されてから100年以上も経って、また1つ電子の新しい性質が発見された画期的な成果といえます。 本研究成果は、量子力学研究や素粒子実験などの基礎研究だけでなく、革新的な電子顕微鏡の開発など 幅広い分野に寄与するものとして期待できます。