少し前、寺子屋の現責任者にここの建て増しをしたいと言われた。 ここを作った彼女がいなくなってもうどれくらいだろう、 確かに古くなってきた建物は私がだましだましなおしていくのにも限界があるように思える。 子供達の学ぶ場が増えるのは彼女が望んでいた事だったので少し寂しいが取り潰しを承諾した。 その際第○代目稗田家当主が彼女の蔵書の引取りを申し出てくれた。 私自身手入れをもてあまし気味だったので非常に助かる。 後々学校に史書室なるものを作って収めてくれるらしい。 彼女がいつくしんだ歴史が他者の役に立つのならそれはすばらしい事だろう。 明後日には取りに来るらしいので私は本をまとめておくことにし、 彼女の本棚からその紙の束達を片っ端から紐でまとめていく。 そんな作業中に彼女の授業の書きとめをしていたノートが見つかった。 彼女の外見には似合わない厳しいキリリとした字が、そこにあった。 なんだかとても懐かしく、彼女の声がするような気がして、私はそのノートを開いた。