それでは、なぜ人間は交換をするのであろう。 その理由は脳にある。脳は情報を交換する器官だからである。 まったく異なるものを交換し、等値化できるアナロジーを有する。 記号や言語は、見ることも聴くこともできる。 すなわち、電磁波と音波が脳の中で等値変換されて、私たちのシンボル活動が生じている。 「金の匂いがする」とは、食物と金が交換され、代替できなければ成り立たない。 アナロジーを利用して、対象世界をシミュレートするということは、 実のところ人間の大きくなって余剰になった脳に由来するのである。 一つの信号に対する一つの反応の回路が余分にあるために、 喩えるものと、喩えられるものとが生まれ、代替が起こり、シミュレートを試みる。 かくして、この余剰が比喩となり、抽象化を生み、オブジェクト指向の考え方になったのである。 (青木淳/『オブジェクト指向システム分析設計入門』)