こんど、ひとつ、ただ、わけもなく面白い長篇小説を書いてあげましょうね。 いまの小説、みな、面白くないでしょう? やさしくて、かなしくて、おかしくて、気高くて、他に何が要るのでしょう。 あのね、読んで面白くない小説はね、それは、下手な小説なのです。 こわいことなんかない。面白くない小説は、きっぱり拒否したほうがいいのです。 みんな、面白くないからねえ。 面白がらせようと努めて、いっこう面白くもなんともない小説は、あれは、あなた、なんだか死にたくなりますね。 こんな、ものの言いかたが、どんなにいやらしく響くか、私、知っています。 それこそ人をばかにしたような言いかたかもわからぬ。 けれども私は、自身の感覚をいつわることができません。 くだらないのです。いまさら、あなたに、なんにも言いたくないのです。