仏頂面を涙でぬらした主人、 「あいよっ! かけ三丁!」 期せずしてあがる歓声と拍手、店の外では、先ほどまでちらついていた雪を止み、 新雪に跳ね返った窓明かりが照らしだす「北海亭」と書かれた暖簾を、ほんの 一足早く吹く睦月の風が揺らしていた。