> 2010/07/10 (土) 05:24:37 ◆ ▼ ◇ [qwerty]> 大きくなったれいむはやっぱり缶コーヒーが大好きだった。
> れいむは聞き分けのいいゆっくりだったけれども、掃除機の音が大嫌いだった。
> 「ゆゆっ! おにーさん! うるさくてゆっくりできないよ! やめてね!」
> 掃除機とはそういうものだ。
> 僕が言う事を聞いてくれないと思ったらしく、ふくれっ面になるれいむ。
> 掃除の邪魔になるからどいてくれと言っても聞いてくれなかった。
> 何度言ってもその場を動かないから僕はついつい足でれいむをどかしてしまった。
> それがショックだったのだろうか。
> 大声で泣き出したれいむは、泣き終わってからもしばらく僕と口を利いてはくれなかった。
> その日の晩御飯をれいむは食べなかった。
> 次の日の朝御飯も。
> 「ゆひゃっ!」
> だから僕は無言でれいむの頬に冷たい缶コーヒーを押し当てた。
> びっくりしたれいむは僕に散々文句を言いながらも気がついたらボロボロと涙をこぼしていた。
> 僕も悪いことをしたと思っていたから素直にれいむに謝った。
> 抱き上げたれいむの柔らかさと温かさは今でも忘れない。
> 僕はれいむが大好きだった。
> 世界一の飼いゆっくりだと思っていた。
> 自慢のれいむだった。
ある日、街の野良ゆっくりたちの間で原因不明の病気が蔓延したとの知らせが届いた。
野良ゆっくりの死体がたくさん転がっていたのを覚えている。
それはゆっくりたちの間で起こる感染病の一種だったそうだ。
“だったそうだ”というのは未だに原因が不明だからである。
ある時、飼育小屋でゆっくりを飼っていた学校の生徒数名が原因不明の高熱に悩まされた。
すぐに飼っていたゆっくりが感染病にかかっていなかったかの検査が行われた。
結果は黒だった。
それが人間に感染したのかどうかまでははっきりとはわからない。
わからないが、人間たちはわからないからこそ、原因の元を絶とうとした。
ある場所に集められたゆっくりたちは一瞬で殺されてしまった。
病気のゆっくりも、そうでないゆっくりも。
いいゆっくりも、悪いゆっくりも。
賢いゆっくりも、馬鹿なゆっくりも。
やがて。
野良ゆっくりも、飼いゆっくりも。
人間に感染する可能性がゼロでない限り、人間と共に過ごす時間の長い飼いゆっくりは最も危険な存在だった。
役場の人間が僕の家にやってきた。
彼らは僕に一本の注射器を渡した。
それにはゆっくりを安楽死させるための薬が入っていた。
すぐにでも床に叩きつけて壊してやろうかと思ったができなかった。
原因不明の感染病は既に大きなうねりとなって広がりつつあったからだ。
いつれいむが感染病にかかるとも限らない。
僕は年老いた母と一緒に暮らしている。
僕はともかく、母が感染病にかかってしまったらどうなるかわからない。
近所のゆっくりを飼っていた家からも、ゆっくりの声が少しずつ聞こえなくなっていった。
参考:2010/07/10(土)05時23分52秒