16~20グレイ・イクイバレントの被曝をした当時35歳の作業員は、染色体が 傷ついたため、新しい細胞ができない状態となり、まず白血球がつくられな くなった。実妹から提供された造血細胞の移植自体には成功する。しかし、 体内の放射線のためなのか、その細胞の染色体に異常が発見された。また、 一旦増加の傾向をみせた白血球数が再び減少。これは放射線の影響で変異し た体内の抗体物質の攻撃により、造血細胞が破壊され定着しなかったことが 原因と関連書籍などで解説されている。事故から約2ヵ月後、この作業員は心 停止状態に陥るが医師たちの懸命な治療により蘇生。しかし心肺停止による ダメージから脳や心臓、肝臓などの機能が著しく低下した。最終的に打つ手 がなくなり、医師は、次の心臓停止は、処置をしないことを家族に告げた。 事故から83日後の12月21日に多臓器不全で死亡した。彼は病床で全身を襲う 苦痛に耐えながら、付き添っていた家族へ逆に励ましの言葉をかけ続けてい たと当時の担当看護師が証言している。