例えば終盤近くの殺陣のシーン。チャンバラをやっているのに絵がほとんど動 いていません。集中線の止め絵とカットエフェクトだけで構成されています。これは宮崎駿オマージュでは絶対にあり得ません。宮崎駿はこういった動きを アニメーションに起こすところに労力を傾ける人です。でも本作では新海誠はいままでどおりの「サウンドノベル」のやり方を使って、少ない枚数でいかに 乗り切るかという方法論でやっています。 例えば前半の渓谷橋からバケモノが落ちるシーン。ただ漫然と同じスピードで 落ちています。でも本来の物理法則からしたらそうはなりません。始めに溜め があり、そこから徐々に加速して最後は一気に川に突っ込みます。そして突っ 込んだ水面が落下点だけ最初一気にへこみ、次に周りの水が戻ってきて真ん中 で高く舞います。いわゆる王冠です。こういった細かいフェティッシュな表現は本作にはまったくといっていいほど出てきません。