昔、バルドラという野原に一匹のサソリがいた。 そのサソリは小さな虫などを殺して食べていたという。 そんなある日、サソリは一匹のイタチに遭遇し、食べられそうになった。 必死に逃げて逃げて…ついに押さえつけられてしまう。 けれども、死力を振り絞り、近くにあった井戸へと飛び込んだ。 しかし、サソリは元来泳げるものではない。 あっという間におぼれてしまった。 そのとき、サソリは水の中でもがきながら、こう神に祈ったと言う。 ――ああ、私は今までいくつもの命をとったかわからない。 そしてその私が、今度はイタチに捕らえられようとしたときは、あんなに一生懸命に逃げた。 それでもとうとう、こんなになってしまった。 ああ、何にも当てにならない。 どうして私は私の体を、黙ってイタチにくれてやらなかったのだろう。 そしたらイタチも、一日生き延びただろうに。 どうか神様。 私の心をご覧下さい。 こんなに虚しく命を捨てず、どうかこの次には、まことのみんなの幸せのために私の体をお使いください――