笑はれてもしかたがない。鵜のまねをする烏。見ぬくひとには見ぬかれるのだ。 よりよい姓名もあるのだらうけれど、僕にはちよつとめんだうらしい。いつそ 「私」としてもよいのだが、僕はこの春、「私」といふ主人公の小説を書いた ばかりだから二度つづけるのがおもはゆいのである。僕がもし、あすにでもひ よつくり死んだとき、あいつは「私」を主人公にしなければ、小説を書けなか つた、としたり顏して述懷する奇妙な男が出て來ないとも限らぬ。ほんたう は、それだけの理由で、僕はこの大庭葉藏をやはり押し通す。をかしいか。 なに、君だつて。